第19回全国中途失聴者・難聴者福祉大会 in 沖縄 
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【大会宣言】 (PDFファイル)

  甚大な被害をもたらした3.11 東日本大震災。復興最中、強い意志を引き継ぎ開催された「第18 回全国中途失聴者・難聴者福祉大会in 埼玉」は、我々にとって様々な学びを得る機会となりました。
本日、全国各地から多くの参加者を迎え、大会テーマを「南風(フェーヌカジ)にのせて未来につなごう!仲間と共に歩もう!完全な社会参加を目指して!」と題して長い大会歴史の中、本県初となる「第19 回全国中途失聴者・難聴者福祉大会in 沖縄」を開催することができました。
障害者基本法改正に続き、障害者総合支援法、障害者差別解消法が成立することで、障害者権利条約がとうとう批准されます。制度の谷間にあった中途失聴者、難聴者がいよいよ社会の中で対等の権利を得る時代になりつつあります。
障害者の定義に社会モデルが取り入れられ、私たちの先達たちがたゆまず運動してきたデシベルダウン運動も半ば達成されようとしています。
社会の各分野で確実な難聴者等の施策が実施されるよう、たゆまず運動を続けなければなりません。
また、本県は、全国6 番目となる“障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例”が2013 年10 月11 日、県議会全会一致にて可決・成立され、2014 年4 月から施行されます。
多くの仲間たちが、ここ沖縄で出会い語らうことで、学び得たことを社会へ発信・還元し、新しい一歩を踏み出すことを、我々は確信しています。
世界を創るひとりとしてここに存在し、今大会にて、中途失聴者・難聴者の完全な社会参加を、そして仲間と共に、誇りと尊厳を持って、次世代に価値あるインクルーシブ社会を目指すことを誓い、ここに宣言します。

第19 回全国中途失聴者・難聴者福祉大会in沖縄 参加者一同


【大会決議】 (PDFファイル)

大 会 決 議

(第19回全国中途失聴者・難聴者福祉大会in沖縄)

難聴者、中途失聴者の権利に対する私たちの取組の理念

 

難聴者・中途失聴者がすべて聞こえの程度に関係なく、一人の人間として尊重され、国民としての権利を享受し、差別なく平等に地域社会の一員として認められることを目標としています。


  2013年12月4日参議院本会議に於いて障害者権利条約の批准に対する決議がありました。全難聴は2005年から国連障害者権利条約採択や言語、コミュニケーションに文字表記等を求めJDFを核とするNGOの構成員として活動して、関係各方面からも賞賛いただいた。更に2007年に条約に署名後は障害者団体の結束を強め障がい者制度改革推進会議の提言を基に2011年、障害者基本法が改正され施行されました。

2012年には障害者自立支援法が改正され、障害者総合支援法が2013年4月より施行されました。2013年には障害者差別解消法が成立し、3年後の施行を目指し対象となる差別の内容について煮詰めて行く準備が進められているところです。障害者権利条約の批准にあたっては国内法整備をはかった上で推進するという方針の元で障害者団体の大同団結がこの日を迎えることができました。

 批准される障害者権利条約でも、改正障害者基本法でも、障害者総合支援法においても障害者手帳の等級区分に対する考え方として「社会モデル」に基づくものとして規定されており、現行身体障害者の等級区分が実情に合わない状況が生まれています。全難聴ではいわゆる「デシベルダウン」運動を30年来にわたり取組んでまいりました。今後は、障害者差別解消法施行における「障害・等級」についても議論・討論が交わされて、生活実態に合わせた認定がなされるよう、引き続き国や関係各方面への働きかけを進めてまいりましょう。

2011年東日本大震災からの3年が経過しようとしています。2013年には世界的な異常気象の影響もあり大規模災害が頻発しています。地震火山国である日本は、大震災後も全国各地で頻繁に発生しています。そして、福島に象徴される原発問題は安全な生活を続けていくのに、まだまだ将来が見通せないという状況が続いています。

このような情勢の中で、私たちは次のような基本的理念を掲げ、要求を推進していきます。

 

1、難聴者・中途失聴者の完全参加と平等を保障するものとする。

(説明)

      障害者権利条約批准、障害者総合支援法の実効あるものとして障害者差別解消法の施行に向けた諸課題に取組んでいきます。当会は、難聴者、中途失聴者の権利が保障されるべく組織を挙げてこれらの実現に取り組んでいきます。

 

2、社会のあらゆる分野での情報・コミュニケーションの保障を進める。

  放送・通信、就労、教育、司法、選挙、交通、防災、文化・スポーツ等社会のあらゆる分野で難聴者、中途失聴者の情報保障、コミュニケーション支援に関わる法制度の整備を求める。

(説明)

   障害は社会の姿勢並びに環境に関する障壁との相互作用という社会モデルの考えに基づきユニバーサルデザイン、情報バリアフリーの実現した環境整備とコミュニケーション支援体制の充実を求めます。

 各種補聴援助システム機器の設備、光・振動等信号装置、字幕とリアルタイム文字の表示、要約筆記などのコミュニケーション支援、電話リレーサービス、遠隔通訳など必要な場における適切な対応が図れる合理的配慮を求めます。公共交通機関の運行情報や公共施設における文字表出、災害時情報の文字伝達、教育の場での情報保障、娯楽施設、文化施設での文字による情報保障と補聴援助システムの整備や設置を求めます。

 

3、障害は機能障害と社会環境により生じるという権利条約の考えに基づき、聴覚障害者の情報アクセス・コミュニケーション保障の観点から新たな定義の制定を求める。

  身体障害者福祉法の聴覚障害認定基準を国際的なレベルに変更を求めていく。

(デシベルダウン運動)

(説明)

   情報バリアフリー、ユニバーサルデザインの理念が浸透しつつある社会では聴覚障害の程度に関わらず、個々に対応した情報・コミュニケーションの保障がなされるべきです。しかし、福祉サービスの対象として「聴覚障害」の認定基準が求められています。純音検査による聴力機能だけでなく、当事者のコミュニケーションのニーズ(生活上の困難度)も加味して設定される必要があります。現行身体障害者福祉法の認定基準は算定根拠自体が聴覚障害者の生活実態から乖離し、国際的基準(500Hz~4kHzで両耳平均聴力40㏈以上)からみても重度障害の基準(500Hz~2kHzで両耳平均聴力70㏈以上)になっています。特に幼少期、学齢期の言語獲得時にある児童、生徒にとっては、将来の社会を背負って立つ人材育成という観点からも重要な問題であり、社会にとっての大きな損失でもあります。地方自治体では、学齢期に達した軽・中等度難聴児への補聴器交付や補聴援助システム機器の貸与等が進んできていることは、事の重要性を地方自治体が認識し対応を急いだからです。国レベルにおいても喫緊の課題として捉えて、身体障害者福祉法別表の聴覚障害認定基準を改訂する等、必要な施策に取り組むべきです。

 

4、難聴者・中途失聴者に対する福祉サービスは抜本的な拡充を求める。

1) 当事者の希望する補聴器の交付と補聴援助システムの新規交付事業開始を求める。

(説明)

   現在耳かけ型を基本とした交付が実施されているが、両耳装用や耳穴形の装用もQOLの向上が認められることから、本人の希望が尊重される交付が必要です。

  障害者総合支援法で給付されるデジタル補聴器は基本構造以外のハウリング抑制機能や

周波数圧縮変換機能も必要です。

  補聴器や人工内耳では、音源から離れたところでの聴取は困難が増大します。それを補う補聴援助システムの給付を拡大することを求めます。

2)難聴者、中途失聴者の聴能訓練、筆談、手話、読話等のコミュニケーション手段の学習、生活訓練等を事業化することを求める。

(説明)

   難聴者の自立には、補聴器装用訓練や情報保障手段の学習や習得など新たなコミュニケーション手段を学ぶ場の獲得が欠かせません。また、難聴者にとって例会などの交流は社会参加上で重要な生活訓練にあたる意義、意味がある。特に中途失聴者や中途で難聴になられる方々の日常生活訓練の場、学習の場の確保がなされていない現状に鑑み、事業化していくことが必要です。

 

3)きこえの健康支援センターの実現を求める。

聴覚保障の推進を医療、福祉の両面から制度化し、医療、福祉、就労、教育など総合的な支援が受けられるセンターとすることを求める。

(説明)

   全国に聴こえに不自由な方は1,900万人に及び、そのうち900万人ほどが何らかの支援、サポートを必要としています。これに関わる社会的資源は分散しており有機的な機能を果たせる機関が存在していません。

  聴覚補償の推進には聴覚外来と補聴給付事業のように医療と福祉のサービスや社会・成人教育、就労・教育を含めた分野との一体的・一元的な連携が取れる施設が必要です。聴覚障害者の情報・コミュニケーション手段に関する総合的対応ができる施設が必要です。これらの機能を担う「きこえの健康支援センターの実現を求めます。

 

5、要約筆記者の養成、派遣事業に関わる特別支援事業の継続と充実を求める。

1)要約筆記者指導者養成事業を継続することを求める。

(説明)

   要約筆記は意思疎通を仲介する通訳としての位置付けが法定化されています。昨年4月からスタートしている障害者総合支援法施行により要約筆記者養成カリキュラムと担い手は要約筆記者とする通知がなされ、一昨年より指導者養成講習会が開催されています。引き続き、指導者養成講習会と現要約筆記奉仕員のレベル・スキルアップをはかるための補習講習の充実と強化のための特別支援事業の継続を求めます。

2)要約筆記者の派遣対象の拡大、範囲の拡大を求める。

(説明)

  障害者総合支援法下での都道府県・区市町村実施要綱では、自助団体への通訳者派遣を明記することを求めます。複数の同障者のコミュニケーションにとって、なくてはならない要約筆記者公費派遣を実施を更なる推進を求めます。

  ②職場への要約筆記者派遣について、雇用主の負担能力を勘案した通訳派遣ができるよう雇用助成金や福祉制度での活用をはかれることを求めます。

③聴覚障害者が定年退職後等に社会人入学として高等教育機関に学ぶ方が増えています。高齢社会にあって、社会貢献、向学心に燃える中高年の方も多くなりました。このような機会に情報保障の配慮が受けられないことは差別にあたります。

   高等教育機関や社会教育の場での情報保障の当事者のコミュニケーション手段、通訳手段に応じた福祉サービスが受けられるよう求めます。

 

3)要約筆記者派遣事業における、都道府県、市町村間を超えた派遣ネットワークシステムの構築と事業化を求める。

(説明)

   障害者総合支援法での通訳派遣は地域で、広域で福祉サービスを受けられるということになっていますが、都道府県内外でいつでも、どこでも、必要な場に要約筆記者の派遣ができ、私たちの権利が守られることが必要です。都道府県に対しての事業啓発を求めます。

 

6、難聴者・中途失聴者が施策決定に参画できる法制度の確立を求める。

(説明)

   全国の都道府県、市町村に至るまで、各種福祉政策決定の場に、当事者参画による保障がなされるように求めます。当事者の参画が保障される「私たち抜きに、私たちのことを決めないで!」という権利条約採択時の精神に基づき進めることを求めます。

 

.当事者団体の国際活動への参画に対する国からの支援を要請する。

(説明)

   2012年6月、4年に一度の国際難聴者連盟の総会、分科会等が開催されました。参加者個人の負担も重く、特に言語の問題もあり、多額の言語通訳費用や同行する要約筆記者の費用も、参加する中途失聴・難聴者の負担となっています。グローバルな現代において、多大の金銭的負担・バリアーを抱えながら参加をしなくてはなりません。また、アジア・太平洋難聴者連盟の設立に伴い、当会の果たすべき国際的な責任も生じています。

 

8.組織強化に結び付けられる事業の拡大に、最大限の支援と助力を要請する。

(説明)

   組織離れは時代の趨勢ではありますが、高齢化社会の中にあって生活していくうえで一番大切な機能はコミュニケーション能力です。嫌がうえにも難聴になればあらゆる人とのコミュニケーションに障害をもたらします。聴覚補償分野では国際的にもレベルは上がったが、本人及び本人を取り巻く環境整備はほとんど進んでいない状態です。中途失聴者・難聴者に対する福祉の充実は現在の日本にとって最大の課題であると認識しています。ハード面での世界レベルからソフト面も含めた世界レベルを実現できるよう最大限の支援を求めます。

 

以上 決議します。

 

2014年1月26日

第19回全国中途失聴者・難聴者福祉大会in沖縄 参加者一同
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