一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
 聴覚障害者制度改革推進中央本部
聴覚障害者認定に関わる詐称事案に関連して、厚生労働大臣による認定見直しに関する答弁がありました。

全難聴は、「障害認定の見直し」が聞こえに困難を抱える多くの人を福祉サービスの対象とする方向で検討されるべきであり、新たな検査方法の導入で、障害に認定される人の範囲を狭めることは容認できないという主旨の要望書を、所轄部署である社会・援護局障害保健福祉部企画課を通じて提出しました。


【聴覚障害認定に係る要望】


全難聴発第13-174

平成26310 

厚生労働大臣 

田村 憲久殿 

 

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

理事長 高岡正

聴覚障害認定に係る要望

 平素は当団体の活動に格別のご支援を賜りお礼申し上げます。

 さて、新聞報道によりますと佐村河内氏の事件を巡って、大臣は218日の衆院予算委員会及び221日の記者会見において、聴覚障害認定の在り方を検討する考えを表明されておられます。

 ご承知のように、現在の身体障害者福祉法による聴覚障害の認定は純音による聴力検査と語音明瞭度検査の結果により判定されており、2006年の調査によりますと聴覚・言語障害による身体障害者手帳の保持者は34万人と報告されております。この聴覚・言語障害者の数は人口比にすると約0.3%であり、世界保健機関(WHO)の2005年報告の人口比4.3%、2013年報告の人口比5.2%(いずれも聴覚障害者数で、言語障害の方は含んでいないと思われます)と比較して極めて低い数値であります。この極端に低い数値の最大の理由は、WHOが純音聴力レベル41デシベル以下を聴覚障害としているのに対して、我が国が純音聴力70デシベル以下を聴覚障害としていることに起因します。静かなところでの普通の会話音は60デシベルとされており、新聞をめくる音は40デシベルです。現行の聴覚障害認定基準は普通の会話、生活音の聞き取りに困難を抱える多くの人を認定外とすることで、それらの人を福祉サービスの対象外に追いやっています。

 我が国においても、219日に障害者権利条約が発効したばかりですが、障害を「機能障害を持つ人と社会的障壁との相互作用に求める」考え方が国際的なルールとなりつつあります。

 今回の事件を契機とする検討は聴性脳幹反応(ABR)などを含めた検査方法についての検討と聞き及んでいます。ABRは難聴や脳幹障害の診断に有効と考えますが、障害認定の見直しは聞こえに困難を抱える多くの人を福祉サービスの対象とする方向で検討されるべきであり、新たな検査方法を導入することによって、障害に認定される人の範囲を狭めることは決して容認できません。

 新たな障害認定を国際基準にそった科学的なものにするため、多くの専門家の意見を聞いて進められることは当然ではありますが、同時に認定の対象となる聞こえに困っている人の日常的な生活の困難さを反映したものであることが求められます。障害者施策の形成過程における当事者参加は、障害者権利条約の根底を流れる理念であります。今回の障害認定検討に当たり、障害当事者の参加に格別のご配慮を併せお願いいたします。 

以上

本要望書PDF