全難聴発13-020 号
全要研発13-ヨ-28 号
平成 25 年 9月 4日
厚生労働大臣
田村 憲久 様
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
理事長 小林 利治様
一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 高岡 正
特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会
理事長 三宅 初穂
日ごろより聴覚障害者の就労にご理解とご支援をいただいておりますことに厚く御礼申し上げます。
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は、全国の難聴者・中途失聴者の団体60協会を傘下に持つ連合会です。また、特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会では、障害当事者と連携しながら、要約筆記、字幕等の文字情報により聴覚障害者の社会参加支援をしている団体です。障害者、とくに中途失聴・難聴者の就労や職場でのコミュニケーションの課題を解決し、だれもが職場で自分の力を発揮できる社会をめざして活動を続けております。
さて、先般「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」が改正されました。障害者、なかんずく中途失聴者、難聴者の就労環境の改善に期待するところです。また、障害者の就労の状況も昭和60年の障害者の雇用の促進等に関する法律以降、関係各位のご努力の結果、徐々に成果を挙げています。とくに、高齢・障害・求職者雇用支援機構機構(以下、機構)による「障害者雇用納付金に基づく助成金」制度の果たす役割には大きなものがあります。機構の本制度の中の「手話通訳担当者の委嘱助成金」につきましては、聴覚障害者が就労後の職場定着の命綱とも呼べるものです。
しかしながら、重度聴覚障害者の中には手話を日常のコミュニケーション手段としないものが多数おり、いわゆる「中途失聴者・難聴者」が制度の対象とされているとはいえない状態です。<資料1>
こうした中途失聴者、難聴者は地域生活において意思疎通を目的として要約筆記を利用しており、職場での会議や研修にも要約筆記を利用しているケースも増えてきております。
平成23年に改正された障害者基本法では第3条で全ての障害者はコミュニケーションの手段として選択の機会が得られることとされ、第22条で国と地方公共団体は手話通訳者と要約筆記者の派遣、養成が義務付けられております。平成25年4月から、障害者総合支援法意思疎通支援事業では専門性の高い意思疎通支援従事者として、要約筆記者が手話通訳者と同じように位置づけられ、市町村と都道府県の必須事業として派遣事業が義務付けられました。本年の障害者雇用促進法に続き、平成25年6月には障害者差別解消法が成立しております。<資料2>
機構におかれましては、早急に「手話通訳担当者」に限定している本制度を、要約筆記を利用する「難聴者、中途失聴者」も含めていただきたく存じます。
また、要約筆記を利用する難聴者には、障害者手帳で4級、6級と認定されているものもいます。障害者基本法第3条により、全ての障害者は意思疎通の手段と機会が与えられるものとされており、対象者の変更をご検討いただきたく存じます。
ご参考までに、資料を添付させていただきました。
<資料1>
身体障害児・者実態調査(平成18年度)
*聴覚・言語障害者数 343,000人(18歳以上の手帳保持者又は同等レベルの推計者数)
聞こえない、聞こえにくい人は600万人以上と推計されています。
聴覚障害者の主なコミュニケーション手段(上記対象者への設問、複数回答)
*補聴器はじめ補聴機器 69.2%
*筆談・要約筆記 30.2%
*手話・手話通訳 18.9%
<資料2>
障害者基本法 第3条
三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。
障害者基本法 第22条第1項
国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を取得し及び利用し、その意思を表示し、並びに他人との意思疎通を図ることができるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備、障害者の意思疎通を仲介する者の養成及び派遣等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
障害者総合支援法第77条1号
六 聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、意思疎通支援(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を支援することをいう。以下同じ。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業
障害者差別解消法
障害者雇用促進法
<資料3>
㈿ 手話通訳担当者の委嘱助成金
1 支給対象事業主
支給対象となる障害者を雇い入れるか継続して雇用する事業所の事業主で、次のいずれにも該当する事業主です。
(1)支給対象障害者の雇用管理のために必要な手話通訳を担当する者・要約筆記を担当する者(以下「手話通訳担当者」「要約筆記者」)を委嘱する事業所の事業主
(2)手話通訳担当者・要約筆記担当者の委嘱を行わなければ、支給対象障害者の雇用の継続を図ることが困難な事業所の事業主
2 支給対象障害者
6級以上の聴覚障害者で必要とするもの
3 支給対象手話通訳担当者等
支給対象となる手話通訳担当者・要約筆記者は、支給対象障害者に対する次の手話通訳・要約筆記業務を主たる業務とする者です。
(1)支給対象障害者の業務上の必要に際して直接的に行われる手話通訳・要約筆記
(2)支給対象障害者の能力の向上等を目的とした研修等に係る手話通訳・要約筆記
(3)支給対象障害者の所属する事業所の労働者に対して、支給対象障害者の業務の円滑化、職場環境改善を目的として行う手話研修等
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